夏の幻の20題

 
帽子は舞い、波が足に打つ

ゆれる幻に恋をしたらしい

競い合い伸びる植物の中で

したたる西瓜の汁を舐める

風の音、蝉の声、君の寝息

夢で飛んだ大空が目の前に

暑くても離れられない背中

ふと小さな命に気づき笑う

からころと屋台を巡る下駄

一口とねだる舌に氷の粒を
 

ぱたぱたと扇ぐ浴衣の襟元

火照る頬を冷たい手が包む

静かに寄り添う夕暮れの影

抑えきれぬ熱に魅入られて

雨をぬぐう腕と虹を探す瞳

見失う前に大切だと告げた

光は闇に咲き、心を焦がす

触れ合う記憶を残した日記

次の季節も共に生きたいと

忘れがたい夏がまた訪れる
 
 
 
 

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